岡山の入管・ビザニュース

行政書士まつだ国際法務オフィスの情報ページです

 最近、女性差別の話題の中で「マイクロアグレッション」という言葉を聞くようになりました。マイクロアグレッションとは、「無自覚の差別行為」という意味だそうです。

 

 差別と意識せず行う差別行為は、悪いと思って行う差別とはまた違う深い問題があって、差別を受ける側がどんなに声を上げても、差別する側からは「小さな問題(または問題ないのに本人が言ってるだけ)」とみなされてしまうところに深い絶望感があると思います。

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 今回紹介する本「外国籍だと調停委員になれないの?」の前半は「外国籍であるという理由だけで調停委員になれなかった当事者側の体験や類似業務の現状紹介」があり、後半は「外国籍でも調停員になれる」という主張の理論的な裏付けについて書いています。

 

 この本の前半を読む途中では、何度か涙が出てきました。マイクロアグレッションという「見えない差別」に抗い続け、疲れ果ててしまい、それでも少し元気になったらまた声を上げる、私の周りにいる「疲れ果てながら闘う人たち」の顔が浮かんできたからです。

 

 日本政府や裁判所が、調停委員を日本国籍者に限定する理由は、以下の部分です。

 

「何かを強制的に決めて従わせたり、国としての判断を行う(公権力の行使または国家意思の形成への参画に携わる)公務員は日本国籍者に限る、という「当然の法理」(=法文にはない内閣法制局の見解です)があるから」

 

 調停委員は、何かを強制的に決めたりせず、国としての判断を行うわけでもなく、「当事者間の話し合いを調整する人」にすぎません。それなのに、「当然の法理」だからと詳細な検討もなく決めて、日本国籍者に限定しています。

 

 「当然の法理」という言葉の「当然」って、うさん臭くないですか。私は会話の中で「当然」を連呼する人は信用しないのですが、それは「当然」という言葉には「この見解は多数から認められている(と思う)から正しい。見直しもしない」という傲慢さや思考停止の意思が含まれているからです。

 

 「当然の法理」という言葉は、戦中に日本国籍者とされて公務員になっていた朝鮮籍者がサンフランシスコ平和条約により突然「非日本人」とされ、公務員からも排斥されていくときの「排除の理論」として導入された、という歴史的経緯も紹介されています。

 

 「当然」という言葉に押さえつけられ「なかったもの」とされてきた様々な人権問題を、法の下に裁く権限を唯一与えられているのが、裁判所です。その最高裁判所は自らの人権問題に本当に向き合っているのか、と厳しく批判しているのがこの本です。

 

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 興味のある人は、この本を読むふたつの方法があります。ひとつは、本を買うこと(笑)。ふたつめは、次の講演会に参加して、この本を無料で贈呈してもらうこと。主催の韓国民団さんが啓蒙のために、参加者の方への無料贈呈を決めました(たぶん先着順)。(講演と本の内容は直接関係ありませんけど)

 

「韓国民団徳島県本部脅迫状投函問題」に関するセミナー

11月12日(日)午後1時−4時

韓国民団岡山県本部会館4階ホール

岡山県岡山市北区駅元町1−5−21

https://www.mindan.org/okayama/news_view.php?number=30

講師:姜盛文(韓国民団徳島県本部団長)

   殷勇基(韓国民団徳島県本部代理人 弁護士)

   平井徳秀(民団岡山県本部生活相談センター長 弁護士)

定員 50名

申込 韓国民団岡山県本部 事務局長 086−225−0826

 

 ぜひ、チャンスがあったら本に目を通してみてください!