岡山の入管・ビザニュース

行政書士まつだ国際法務オフィスの情報ページです

岡山市北区の行政書士まつだ国際法務オフィスからのニュースです

 入管の仕事をしていると、普段は忙しくて気にかけている暇がないんだけど、だんだん小さな問題や違和感が積み重なって、いきなり線でつながるように感じることがあります。今日はそんな壮大な妄想の話なので、興味ある人だけお付き合いください。

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 2025年になってから、大企業(カテゴリー2)の一部製造業の方から「これまでは許可されていた『技術・人文知識・国際業務』の認定申請が突然一斉に不許可になった」と相談が来ています。その経緯や原因を聞いているうちに、小さな疑問の重なりがぱっと線でつながりました。

【疑問1】申請における「企業カテゴリー分類」の登場

 労働系の在留資格を申請するときには、申請人は十種類前後の書類を添付するんですが、2009年9月に「企業カテゴリー別の申請書類リスト」がサイトにいきなり登場し、「大企業(カテゴリー1,2)で働く申請人は添付書類が原則不要」となりました。

 「大企業であれば書類偽造や虚偽申請がないだろう、と思ってるのかな。大企業に甘くなったな」くらいしか、当時の私は考えていませんでした。

 でも実は、2009年はリーマンショックで雇止めされた日系ブラジル人が帰国支援金をもらって大量に帰国した年でもありました(2009年3月実施。3年間は再入国禁止)。今から思うと、日系ブラジル人の代わりに労働力を大量に確保しなければいけなくなったときのために打たれた「布石」だったのではないか、と思っています。つまり、「審査を簡略化」することで何かに「目をつぶり」、大企業に当面の労働力を確保してもらおうという意図があったのではないか、と思うのです。

【疑問2】派遣会社の異常な営業

 私は大企業との取引はあまりないのですが、企業カテゴリーが導入されてから、「海外系の派遣会社やブローカーから、工場に『技術・人文知識・国際業務』で人材を入れないかと営業が来る」という話をあちこちで聞きました。つまり、「カテゴリー2の会社は添付書類が不要だから、実際は工場で技能実習生と同じような労働をさせていても分からない」という営業内容なのでした。

 なぜこんなに派遣会社が自信満々に営業するのか、そして大量に外国人を申請すれば入管も分かるはずなのに、なぜ大量に許可を出し続けるのか、疑問でしたが、何しろ私の顧客ではないので、静観していました。申請書を見せてもらったこともありましたが、はっきり現場作業をすると書いていても、給料が実習生並みでも、許可が出ていました。こんな状態だから、行政書士は不要だったのだと思います。

 【当時の背景・現場労働の限定的許可】

 工場の現場労働ができる外国人は、もともと在留資格「技能実習1号、2号(合計3年間のみ在留可能)」の人だけでした(就労制限のない身分系の在留資格などは除きます)。でも、「国際技術移転」という名目が「人手不足の補充」という実態とかけ離れていたため米国からは強制労働だと非難され、真正面から現場労働者として受け入れる法制度を求める声が高まっていました。

【「特定技能」の登場】

 そして出入国在留管理庁は2019年4月に、「技能実習」のあとにも現場労働できる「特定技能」という在留資格を創設しました。産業界でつくる協議会や機構などが監理(中間)組織として入るので、政治・行政関係者にとっては「中間マージン(利権)を得られる」在留資格制度です。受け入れ人数の制限はあるものの、これを拡大していくよう政府は進めていきました。

 もともと外国人労働市場は、大卒以上の知識や技能を使う労働者(職業経験年数に換算すると10年間に相当)の人と、駆け出しの技能実習生(最大3年間)にしか許可を与えていませんでした。中間(4-9年目)が抜け落ちている不自然な状態で、「外国人労働者を継続して育てることができない」ことは明白でした。外国人労働者が10年間継続して定着すると永住許可を得られるようになり、教育や医療などのコストも負わなければいけない、という非人間的な考えからキャリアパスを意図的に断絶する仕組みになっていました。この政策には怒っている会社の人も多くいました。


 話を戻して、「特定技能」は、空白期間であった実務経験年数「4-9年」を補う存在として出てきたのです。じゃあ現場労働者は「技能実習」「特定技能」でもう賄えるね、と思うかもしれませんが、一部の産業分野の一部の業種しか彼らを雇用できません。

【他資格から「特定技能」への「追い込み」開始】

 リーマンショック以後、大企業の一部は派遣業者とともに「技・人・国」の人を工場や倉庫などの現場に配置してきて、入管も黙認してきました。そこに「特定技能」のような新しい在留資格が生まれると、いままであいまいに「技術・人文知識・国際業務」の枠で許可されていた業務が、いきなり分類変更され「その領域は(たとえば特定技能)の領域である」として不許可になります。今、大手の企業で大量に不許可とされている「技・人・国」は、その労働者の在留資格を「特定技能」へと追い込むための不許可なのです。

 冒頭に戻って、私は工業、倉庫、店舗などの現場に配置される「技術・人文知識・国際業務」で突然不許可になったという相談を受けると、次のように整理して、救済の余地がある場合のみ再申請の依頼を受けています。

① 現場においても、高度な知識、経験を必要とする業務がある
② 高度な知識、経験を必要とする業務をそれ以外の業務から切り離して働ける状態である
③ キャリアパスとして現場労働の経験が必要な場合でも、数年の現場労働をへて高度な業務へ移行できる
④ 高度な業務を行う者の人数が、業務内容からして適正だと証明できる

これで救済できるのは一部だけですが、これに当てはまれば、可能性はあるのでお受けしています。

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 繰り返しますが、「特定技能」は多くの産業で受け入れが禁止されている政策です。労働力を求めている企業間の不平等を招いています。この「労働力供給の格差」は利権と絡んだ構造的不平等だと思います。特に中小企業は苦しそうです。

 ちなみに、「労働中間層の空白地帯」を埋めていたのはカテゴリー2の「技・人・国」だけではありません。留学生や在留資格「家族滞在」のアルバイト(資格外活動)も「労働市場のサイドドア」と呼ばれ、正規労働者ではないけれども労働市場の穴を埋める存在として容認されてきました。こうした留学生や家族滞在も、特定技能へと誘導するような行政指導や、厳格な審査の末の不許可が増えています。

 ある程度の人が「特定技能」へ追い込まれるのは仕方ないことだと思っています。ただ、これで人手不足を解消できるのは一部の企業のみです。もともと「労働の空白地帯を埋めるための在留資格がない」産業分野や職種が存在して、その分野の人には解決策はありません。外国人を供給することができない産業や会社は、どうすればいいのか。そんなことを感じています。